ずれずれブログ

時々考えたこと

200回のSTAP細胞作り

今朝の日テレニュースで、小保方さんは『毎日毎日STAP細胞を作る実験をやっていた、だから200回成功したというのは真実です』とのコメントを文書で発表したと報じていた。どうして、こういう言い方するかな・・・と不思議に感じた。問題は、毎日毎日STAP細胞を作って何やってたの?ただひたすらSTAP細胞を作るだけ、作ったSTAP細胞を使ってどのような実験をやってたの?

普通の研究者なら、数回安定してSTAP細胞を作ることに成功すれば、次には、その細胞を使って新しい実験に進むということになると思うのだが、それが無い。実はこれが無いということは出来たと信じたSTAP細胞は実はSTAP細胞では無かったのではないのかと普通の研究者なら考察をし、その細胞を確かめる実験をする。

で、小保方さんの場合そういう考察は一度も語っていない。STAP細胞がホントにSTAP細胞なのかどうか、自分でも確信が持てなかったのではないだろうかと推察する。だから、何度も何度も作って、あるポイントまではいくから『STAP細胞が出来た』と確信はする、しかし、その次の実験をしても失敗する。失敗の考察をちゃんとしないから、同じようにSTAP細胞なるものを再び作り、やはり次のステップに進んだところで失敗する。ひたすらこれをくりかえしているうちに200回もSTAP細胞を作ってしまった。確かにSTAP細胞が出来ているのに、変だ、明日失敗したらもうやめようと何度も思いつつ、でも何度繰り返してもSTAP細胞は出来ている。そして200回も作ったのだから真実だと思い込んだ。このような場合、普通なら後ろ髪を引かれつつ、STAP細胞からは手を引くものだが、小保方さんは思い入れが強すぎて手を引かず、多くの研究者を巻き込んでしまったし、巻き込まれた研究者も瞬間とは言えSTAP細胞に魅了されてしまった。

だから、小保方氏は、STAP細胞と思しき細胞を若山先生のところに持ち込んでキメラ細胞作りを依頼した。最初はうまくいくはずは無いと考えていた若山先生は、やはりうまくいかなかった。しかし、絶対に出来ていると信じていた小保方さんはめげずに何度も何度も若山先生のところに『これが新しいSTAP細胞です』と持ちこんだ、そして何度も失敗した。

ところがある日『ついに成功してしまったんだ』と若山さんは言った、震えたという。よほどの驚きと感激だったのだろうと思う。そして、執念でSTAP幹細胞が出来たのだと感動したようだ。しかし、研究では、この時期が最も危険なのだといことを胸に刻むべきなのである。そう、別の細胞の混入問題である。

『樹立が難しい細胞の樹立を私がやった』すごいだろうと喜ぶ場合、その多くは別の細胞が混入して、あたかも成功したかのように見えてしまうことがあるのだ。多くの研究者がこれによって誤った細胞を世に送り出してきている。細胞バンク設立されて、細胞の検査体制が確立した後、こういう問題が実に多かったという事実が明らかになった。日本だけにとどまらない、世界的に・・・である。

若山先生はやはり信頼できる科学者である。若山氏は、問題が指摘され今のような状況になったので、このSTAP細胞を取り出してきて、遺伝子検査を実施したという。その結果、STAP細胞を作った元のマウス(129系統)と異なるマウス(B6系統)由来の細胞だったことを明らかにした。つまり、STAP細胞と言われた細胞からSTAP幹細胞は一例も作られていないことを明らかにした。つくづく残念なのは、この確認実験を論文を書く前に何故きちんとやっておかなかったのかということだ。

振り返って、山中先生がiPS細胞を作ったという最初の論文をNatureに投稿した時のエピソードだ。ちょっと専門的になるのであまり一般的に語られてはいないが、この小保方論文で見逃された実験を山中先生の場合はNatureがちゃんと要求していた。その実験とは、iPS細胞を作った元の細胞遺伝子型分析とiPS細胞を作った後の細胞遺伝子型分析を比較せよというものだった。iPS細胞では若干の遺伝子変化はあるかもしれないが、作成前の細胞と作成後の細胞が同じ細胞、正確に言うなら同じ人に由来する細胞であることを確認せよということになる。この実験方法とは、最近度々司法の分野で問題になる冤罪事件の決めてとなる遺伝子分析と同じ実験である。人の場合は、手法が確立されているので割合容易にできる。しかし、マウスでは必ずしも確立していないことと実験用のマウス遺伝子型の共通性が高く分析は確かにしにくい。しかし、次世代シークエンサーが普及している今、相当広い塩基配列を分析すればかならず確認できる。だから、捏造発覚後若山さんは、この実験をやりSTAP細胞を作ったもとの細胞と、出来たSTAP細胞遺伝子型が変化したから、細胞の混入等の事故が起ったのだろうと考察し、結果的STAP細胞が出来たとは言えないと結論を下した。

思えば、山中先生が最初のiPS論文を出した頃、細胞の混入や誤謬が世界的に問題にされていた。勿論日本国内でも細胞バンクを中心に問題視して、検査体制を確立していた。英国ではBBC放送が『Cancer Research Wasted Milions』という番組を放送した。細胞の間違えは、巨額の研究費をどぶに捨てるのと同じだということであった。実際に『STAP cell research wasted milions』という様相を呈している。

STAP細胞は、ここまで批判を受けながら、作った・出来たという人が徐々に減ってきて今や本人とアメリカのバカンティ教授だけになってしまった。そして、再現実験には今日の時点でだれも成功していない。小保方氏は『第三者も成功した人がいます』と発言したが、第三者名は公開されず、そのデータを把握しているという理研は、これはSTAP細胞が出来たことを証明していないと昨日公表したとのこと。

問題になり始めてから、STAP細胞とSTAP幹細胞を厳密に区別し始めた。これは要注意であろう、責任逃れの準備を始めているのかもしれない。