ずれずれブログ

時々考えたこと

理研が多くの研究機関に間違ったマウスを提供してしまったそうです

2014年6月22日

理研が間違ったマウスを提供してしまったそうです(朝日デジタル引用)。この場合のマウスとは研究材料として利用されるマウスですから、研究のリソースと呼ばれます。

研究所が材料を提供するというと、ちょっとした違和感を感じませんか?研究材料を提供するという仕事は、いわば研究試薬を提供する仕事とよく似ています。したがって、ふつうに考えれば、材料提供屋さんということなので最先端研究所がやることか?と疑問になります。

実際、研究用のマウスも実験動物中央研究所(実中研)というマウスを提供する仕事を専門に行う業者があります。もちろん、マウスの維持には学問的なむずかしさがありますので、研究施設も伴うのはあたりまえのことですが、マウスの維持管理などの研究が中心になります。という目で見ると、報道されたこの記事に若干の疑問が出てきます。

理研といえばノーベル賞を取ろうという日本の中で最先端の研究機関です。一方リソースセンターの第一の役割は言わば実験材料の集配組織です。最先端の研究機関と材料の集配組織がいっしょにあることに違和感を感じるのは私だけでしょうか?もちろん、一緒にある場合もあるのですが、理研という巨大研究機関の内部サービス部門としてあるならいいのですが、日本全国津々浦々の弱小研究所まで理研がサービスするのが妥当なのでしょうか。何か違和感を感じます。

理研、誤ったマウスを提供 41機関、研究に支障も

朝日新聞デジタル 6月22日(日)5時30分配信

 理化学研究所が国内外の研究機関の注文に応じて実験用マウスを提供している事業で、誤ったマウスが繰り返し提供されていたことがわかった。41機関に注 文とは異なる計178匹の遺伝子組み換えマウスが提供され、なかには実験データが使えず、研究に支障が出たケースもあった。

 正しい遺伝子組み換えマウスの提供は、iPS細胞などの再生医療研究を支える基盤となっており、ミスは研究の信頼性を損なう事態につながりかねない。

 誤ったマウスを提供していたのは、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)。約6900種類の組み換えマウスを管理・販売する国内最大の 実験用マウス提供機関だ。センターは多様な組み換えマウスを開発者から預かって管理。研究機関はセンターが管理するマウスのカタログから実験に適したマウ スを選び、繁殖用の種マウスとして数匹購入し、繁殖させて実験に用いる。

 

 いやいや、理研は最先端の研究をやって、そこから生まれた最高度のリソースを提供するのだから『理研が行うことが重要なのだ』というのが理研の理屈で、それには確かに一理あるというわけです。それは私もそう思います。しかし、それでもリソースを配布するという宅配業者の仕事を理研が行うということには、どうでしょうか、かなりの違和感を感じるのです。

報道でも、日本最大のマウスの提供を行う組織だとありました。実験動物中央研究所というマウス提供機関が理研のマウス分譲を開始する以前からありながら、それを追い抜いて最大の分譲機関になってしまった理研ていったいなに?という疑問がわくのです。

理研は、日本の研究を全部一手に引き受けて、材料の分譲から最先端研究までのすべてを自分の手で握ろうとしてしまっているのではないかと、ちょっとした恐ろしさを感じてしまうのは私だけでしょうか。

最先端の研究、ノーベル賞を取ることが目的の研究機関は、材料の分譲という宅配業者業務を正当に評価することができるのでしょうか?私はできないのではないかと思います。だから、間違えも生じるのも無理ないことなのでしょう。